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代表のつぶやき
2017年5月25日
東京都の入札制度改革について

先週あたりにメディアでも報道されていた東京都の入札制度改革について思うところを少々述べます。

現状では東京都発注の公共工事案件は予定価格が公表されています。予定価格というのは分かりやすく言えば、東京都がそれぞれの工事ごとに見積もっている予算のことです。

受注者(私たち)としては、予定価格ギリギリで落札できた方が高く受注できるわけですから当然ありがたい話です。

今回、この予定価格の公表制度が問題になったのは、高額物件において1社のみが応札(入札に札入れをすること)し、それも予定価格ギリギリだったと言う事例が散見されたからのようです。

そこで東京都はこのような怪しげな入札を避けるために入札制度の改革を行うべく、様々な新たな制度を施行することにしたわけです。

当社は東京都の公共工事(建築工事)においてのランクがCランクですので、大きく影響を受ける制度の変更としては、

・予定価格の事後公表

と言うことになります。

今までは予定価格が事前に公表されていることから、どの入札に参加するかを検討する際に工期と予定価格との兼ね合いで判断することが出来ました。

しかしながら、予定価格が事後公表になってしまうと工事の規模を予定価格でつかむことが難しくなり、数多くの入札参加に希望を出すことになり、見積の労力がかかってしまう可能性があります。

また、予定価格が事前に分かっていると、最低制限価格(この金額よりも少なく入札をした場合には否応なしに無効になってしまう)をある程度予測することができたりします。(その価格を予測するソフトウェアすら販売されています)

当社が入札に参加できるような案件については今年の10月以降に実施されるようなのですが、会社としても対応策を考えなければなりません。

正直なところ、最低制限価格を予測できなくなることについてはあまり心配していません。東京都以外の発注者である各官公庁や台東区役所などは、事後公表だったり非公表だったりするのですが、幸いにして当社は受注できているからです。

ただ、最低制限価格が予測できなくなることによって、最低制限価格を下回る応札のみ、つまり不調の案件が増えないかが心配です。

と申しますのも、このような状況を回避するために、予定価格が事後公表だったりする案件については最低制限価格制度では無く、低入札価格調査制度(制限ラインを下回った入札に対して一定の調査をして問題なしとの判断がなされれば落札業者とする)が併用されていることが多いのですが、今回の東京都の制度では私たちが参加するような規模の入札においては最低制限価格制度がそのままになっているからです。

いずれにしても、貴重な税金を有効に活用するために行われる今回の制度改革の試行でありますから、今の時代や建設業の状況に合った、より良い形の入札制度になっていくことを望みます。

しかしながら、制度が改革されることによって、受注者側に今まで以上の手間や労力が掛かってしまうような事態にならないことも心から望みます。

我々に余計な手間や労力が掛かると言うことは、大切な社員一人一人の労働時間が費やされると言うことになります。

どの会社も人手不足だと思います。だからこそ、それぞれの会社が知恵を絞って、省力化に向けて努力しているはずです。

それでも、限界があります。

東京都は「ライフ・ワーク・バランス」を目指している自治体であり、私もその施策に共鳴する部分が多々あります。

ただでさえ、建設業は「ライフ・ワーク・バランス」が実現しにくい業界です。それでも、なんとか実現しようとしている会社があることも忘れないでもらいたい。

制度を構築する方々には、多面的な「バランス」を考慮していただけたらと思います。